管理会計を過信すると倒産にたどり着く〜その1

固定費の落とし穴では、管理会計の限界について触れました。
今回はもう少し踏み込んでみようと思います。

管理会計とは一般的に「主として、会計情報を経営管理者の意思決定や組織内部の業績測定・業績評価に役立てることを目的とするもの」とされています。
ということで、最近では多くの企業が導入しているようです。
経営コンサルタントの間では万能であるかのように言われている管理会計ですが、実はそれほど効果のあるものではなさそうです。
もし管理会計が本当に万能であるならば、日本の倒産件数はこれほど多くなっていないはずでしょう。
現実は、起業して10年後に存続している企業の割合はわずか7%だという統計データーもあるそうです。
もちろんこの中には、管理会計を導入しても倒産してしまった企業もたくさんあるでしょう。
それでは、いったいどこに問題があるのでしょうか。
そもそも管理会計が経営に役立つというのは、妄想に過ぎないのでしょうか。


−−−ゴミを入れればゴミしか出ない−−−

管理会計の全てが全く使い物にならないというわけではありません。
問題はデーターの抽出方法にあるのです。
「ゴミを入れればゴミが出る」という、コンピューター界での有名な言葉があります。
これは「どんなに素晴らしいコンピューターでも、入力するデーターがデタラメであれば、出力される結果もデタラメになってしまう」という意味です。
管理会計とは問題解決のための分析ツールですから、どれほどよく考えられたシステムであってもデーターの信頼性に欠ければ何にもなりません。
それではどんなデーターに問題があるのでしょう。

管理会計における分析手法で有名なものに変動損益計算書分析(損益分岐点分析)というものがあります。
これは全ての費用を固定費と変動費の二つに分類して分析する方法です。
変動費とは「売上高や販売量の増減に応じて変動する費用」を指し、固定費とは「売上高や販売量の増減にかかわりなく一定である費用」とされています。
変動費の代表的なものには「仕入・外注費・販売手数料・広告宣伝費」などがあります。
一方固定費の代表的なものには「給料・減価償却費・リース料・借入金の利息・地代」などがあります。
このように変動費とは売上高に密接な関係のある費用ですから、うかつに減らすと売上高が減少してしまうことになります。
そこで変動損益計算書分析では、減らしても売上高に影響を及ぼさない固定費を削減することで利益を確保しようと考えます。
これは非常に論理的であり合理的ですから、この通りに行えば間違いなく利益が増加するはずです。
しかしなぜかうまくいかないケースが多いようです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。


−−−勘や経験ではわからないこともあるのです−−−

多くの企業を見てきた結果、その理由が明らかになってきました。
勘や経験に頼りすぎていることが原因なのです。
変動損益計算書分析で最も重要なことは固定費と変動費を正確に分類することです。
この分類を間違えると、変動費を削減してしまう恐れがあるからです。
そうなると売上高が減少してしまいますので、本末転倒となります。

それでは経営者たちはこの固定費と変動費をどのようにして分類しているのでしょうか
100人を超える経営者に尋ねてみたところ、次にような答えが大半を占めました。
セミナーで教えてもらった・書籍から学んだ・上司に聞いた・税理士や会計士に教えてもらった・・・
つまり誰かの分類方法をそのまま持ち込んだことになります。
さらに具体的な分類方法を尋ねてみました。
すると驚くべき事実が浮き彫りになったのです。
勘定科目で分けている
これが回答でした。

まとめると次のようになります。
他人が勘と経験から導き出した分類方法を、勘定科目毎に当てはめて分類している
このようにして得られた固定費・変動費のデーターは、果たしてダイヤの原石なのでしょうか、それとも屑ダイヤなのでしょうか。
これを見ていると、まるで占いのようにも見えてきます。
当たるも八卦当たらぬも八卦ですから。
(次回へ続く)