オンリーワン取引は危険度100%ーその3

(承前)

前回までで【1】取引先が一社専属である状態について解説してきました。
纏めると次の5つのリスクがありました。
倒産リスク
減益・キャッシュフロー悪化リスク
規模縮小・撤退リスク
内製リスク
癒着に伴う不正リスク

いずれも倒産に直結する重大なリスクです。
回避策は取引先の複数化となりますが、これは考えているほど難しいものではありません。
人は安定を求めるものです。大きな変化には耐えられないと考えがちです。
そしてその期間が長くなればなるほど、その変化を不可能なものだと考えてしまいます。
自分一人の考えに固執せず「まずはやってみよう!」と考えたときにだけ、目の前の壁が消えるのです。


次に【2】取扱商品が単一品目である状態について解説します。
これには需要縮小リスクがあります。
取扱商品が一つである場合、その商品の需要がある間は良いのですがいったん需要が失われると一気に凋落が始まります。
需要の縮小が事前に予測できていなければ、あるときを境に坂道を転がり落ちるように売上が減少することになります。
最近ではCDから楽曲配信への急激な移行により多くのCDショップが廃業を余儀なくされました。
そして出版業界にもその波が押し寄せるということで、こちらはかなり前倒しで対策を練っているようです。
新聞業界も同じように危機感を覚えているようですが、彼らの問題は扱っている商品を紙媒体単一だと考えているところにあると思われます。
ニュースや情報が商品であると考えるならば、その配信方法が変わっても同じように収益を得ることは可能なはずです。
なぜならば新聞社の持つ圧倒的な情報収集力は、他の追随を許さないほどのものだからです。
日本経済新聞社は2010年3月に有料電子版を公開しました。
2010年12月現在の利用者数は10万人を超えたといいますから、この戦略は正しかったことになるでしょう。
2011年には朝日新聞社が有料電子版の公開を始めるといいます。
紙媒体からの撤退には広告収入の減少など様々な問題は存在しますが、時代の変化にいち早く対応できたところから生き残ることが出来ることは間違いありません。
このように単一品目に依存した状態というのは、その需要が失われた時のリスクが非常に大きくなります。
単一品目に依存した状態ということは、当然ここには士業も含まれます。
既に崩壊した業界も存在する士業は、真剣に取り組む必要がありそうです。
行政書士・社会保険労務士・司法書士の業界では、既に独占業務だけで経営が成り立っている事務所はほとんど見られなくなりました。
行政書士は「街の法律家」となり、社会保険労務士は「人事コンサルタント」となりました。司法書士に至っては「過払い利息回収代行業」となっています。
税理士も「記帳代行業」が重要な収入源となっている事務所がほとんどです。
このようにそれぞれの専門分野に近接した業務を取り込むことで取扱商品を複数化して生き延びてきた士業ですが、変化と共に内製リスクが存在するようになってきました。
既に【1】取引先が一社専属である状態でも述べたとおり、それまで外注として受注していた業務を、依頼者が自社内でこなせるようになることで外注を切られるリスクです。
インターネットが普及した現在、ほとんどの知識は検索することで入手可能です。
中途半端な知識ではとうてい太刀打ちできるものではありません。
従ってこの需要縮小リスクを回避するには、事前の情報収集と複数品目へのシフトと同時に、より専門性の高い知識の習得が必要となるでしょう。
                                    (次回へ続く)