オンリーワン取引は危険度100%ーその2

(承前)

三番目には規模縮小・撤退リスクがあります。
前項の減益・キャッシュフロー悪化リスクの次に来るリスクですが、取引先の規模縮小や市場撤退に伴ってわが社だけがリスクを被るケースです。

最近では日本航空で大きな問題になっていますが、企業は倒産を避けるためであれば従業員の解雇も余儀なくされるものです。ましてや事業規模の縮小やある市場からの撤退などは当たり前に行われるものでしょう。
このリスクに似たものに内製リスクがあります。
これは従来外注に頼っていたものが、何らかの理由で内製化できるようになったことにより外注先が必要でなくなるものです。
最近の例では、大手印刷会社によるカタログ写真撮影があります。
以前はカタログ写真の撮影はプロのカメラマンの仕事でした。
もちろんこれは基本的には今でもそうですが、デジタルカメラの発達によりプロでなくても撮影できるものが出てきました。
カタログ販売会社の商品撮影です。
最近のデジタル一眼レフカメラの性能は、一昔前の中判カメラなみに向上してきています。
1000万画素を超えるものも出てきましたので、A4版ぐらいの写真は比較的簡単に撮れるようになってきています。
さらにPhotoshopなどの画像処理ソフトの進化により、ライティングミスもかなりの程度までは修正が可能となってきています。
以前はプロの技であったライティングも、いまではPC上で手を加えられるようになってきました。
これに伴って、広告カメラマンの仕事が激減しています。
広告写真しか撮れない人は、どんどん仕事が無くなっています。
このリスクを回避する術も、取引先の複数化と力関係の向上しかありません。
力関係の向上の問題点は減益・キャッシュフロー悪化リスクと同様に存在します。


四番目には癒着に伴う不正リスクがあります。
金融機関が担当者を数年ごとに変更したり、あちこちに転勤させたりするのはこのリスクを避けるためでもあります。
従業員が取引先と結託して横領などの不正を行うケースなどがこれに該当します。
規模の大きな不正は新聞やニュースで報道されますが、中小企業においても数千万円〜数億円規模の不正は少なくありません。
おもしろいことに、これで資金繰りが行き詰まることはほとんどないようです。
この不正は基本的には会社に判らないように行われるためです。
しかし取引先を巻き込んでの不正は、その取引先にも迷惑をかけることになるでしょう。
お客様からの信用を失うことにもなりますので、注意が必要です。
規模が大きくなると、その不正が社会問題となり企業の存続そのものを脅かしかねません。
このリスクを回避する術は、取引の透明化と定期的な担当者の変更です。
このためにも、従業員のスキルに頼る業務形態は極力避け、いつでも誰かに変更できるように業務を定型化する必要があります。(次回へ続く)