オンリーワン取引は危険度100%ーその1

企業経営において、オンリーワン取引は非常に危険です。
オンリーワン取引とは次のようなものを指します。
【1】取引先が一社専属である状態
【2】取扱商品が単一品目である状態
【3】経営判断をする頭脳が実質的に一つである場合
【4】利益の源が実質的に一つのもの(人、商品、支店など)に集中している状態
これらについてそれぞれどんなリスクが潜んでいるのか順番に見ていきましょう。

【1】取引先が一社専属である状態
これは、中小企業においては非常に良く見受けられるものです。
もちろん大企業であっても部や課ベースで見た場合、これに該当することはありがちです。
これがなぜ危険なのかについて解説します。
一番目に挙げられるものに倒産リスクがあります。
これは読んで字のごとく、その取引先が倒産することに伴うリスクです。
取引先がトヨタなどのように、その企業が倒産する確率よりもわが社が倒産する確率の方が遙かに高いケースもありますが、そのようなケースはまれでしょう。
一社専属の場合、取引先が倒産=わが社の倒産という図式が100%成り立ちます。
このリスクを回避する術は、取引先を複数にしてリスクを分散させることしかありません。

次に減益・キャッシュフロー悪化リスクがあります。
取引先がいつまでも増収増益であればこのリスクは生じない確率が高いでしょうが、逆に取引先が減収している場合を考えてみます。
一社専属である場合は、取引先とわが社の力関係を考えた場合、取引先の方が強いケースがほとんどです。
唯一の例外は、わが社の取扱商品が十分に市場性があり、かつ、その商品の取り扱いがわが社のみであるケースでしょう。(このオンリーワンにも需要縮小リスクは存在します)
取引先の方が力関係が強いケースでは、取引先の減益に伴って値引きを要求されることはよく見られます。また支払時期の延長や支払手段を手形に変更されるケースもあります。
そしてほとんどの場合、これを受け入れるしか生き残る道が残されないのです。
当然のことながら、これを断ると取引先はわが社を切ってくるからです。
このリスクはトヨタなど倒産リスクの無い場合にも想定されるものとなります。
このリスクを回避する術は、先ほどと同様取引先を複数にしてリスクを分散させるか、取引先との力関係をイーブン以上に持って行くかのどちらかでしょう。

このように言うと「取引先との力関係をイーブン以上に持って行くなんて無理に決まっているじゃないですか」という経営者が多いのですが、決してそうではありません。
例えば、取引先への貢献度を同業他社に比べて圧倒的にすることで、取引先はわが社を切りにくくなるでしょう。
そうなれば値引きや支払条件の変更を持ちかけられる確率が下がると同時に、持ちかけられる順位も格段に低くなると思われます。
弊社のお客様にもこの方法で爆発的な増収増益を実現しておられる企業があります。
設立当初から一貫して「中小企業のメリット=小回りが効くこと」を武器にすることを提案してきたC社は、わずか5年で「大手企業ではなく御社に頼みたい」と言われるほどになっています。
ビジネスモデルはBtoBですから同じ取扱商品であれば大手企業の方が安価なケースもあるのですが、徹底したお客様主義で信頼を勝ち取っているのが勝因なのでしょう。
またこのような例もあります。
A社は設立15年を経た建築業です。
ある建築会社H社の専属下受けとしてスタートしました。
私は社長に、事あるごとに取引先を増やすように提案してきました。
しかし忙しいので営業に出ている暇がないとのことで、数年この状態が続きました。
ある時、仕事をした依頼主から気に入られて、その会社の仕事はほとんどA社に依頼がくるようになりました。
ここから取引が広がっていき、取引先が複数となっていきました。
そんなある日H社から連絡があり、業績悪化を理由に赤字の現場を押し付けられそうになりました。
それまでも何度か赤字の現場を扱った事があったのですが、それまでは一社専属だったために断る事が出来なかったのです。
しかしこの時は違いました。
取引先が複数化したため、無理な押し付けに対してNOと言えるようになったのです。
それまでも真面目な仕事ぶりが評価されてきたこともあり、ここからA社の業績は劇的に向上し始めました。
建設不況と言われる現在において、A社は増収増益を果たしています。
それからというもの、取引先を複数化することに心から賛同し、積極的に取り組まれています。
A社だけでなく、この提言によって業績が向上したり倒産を免れた企業があります。
これらは無理だと諦めずに取り組んだ結果でしょう。
ただし力関係の向上だけでは倒産リスクや撤退リスク・不正リスクには対処できません。
やはり取引先の複数化が必須となるでしょう。(次回へ続く)