会計実学セミナー

記事一覧へ戻る

経営分析で経営は良くならない

経営分析の一つに財務指標分析があります。財務諸表上の数字を用いて様々な分析数値をはじき出す手法です。
この財務指標分析でもっとも有名なものの一つに「流動比率」があります。
これは流動資産(おおむね1年以内に現金化される資産)と流動負債(おおむね1年以内西払わなければならない負債)を比較して、流動資産の方が1.5倍程度(流動比率150%)あればその企業は安定していると言われる指標です。おそらく多くの経営者がこの指標を基準として経営に当たっていることだと思われます。

それでは流動比率が200%の企業であれば、安全なのでしょうか。
いいえ、安全とは限らないのです。

たとえばこの企業の流動資産が売掛金2億円、流動負債が買掛金1億円だったならば、どうなるでしょう。
すぐにでも資金ショートしそうです。
これほどまで極端でなくとも、中小企業の資金繰りは非常にタイトです。
流動比率が150%以上あるからといって、必ずしも安心できないことは自明の理です。
実は、これは何も流動比率に限ったことではありません。財務指標分析と呼ばれる手法は、そのほとんどがこのように問題点を内在しています。
それに、こんなに簡単な方法で経営が改善するならば、誰も苦労しないでしょう。
経営に王道はないのです。