あなたがいなくても会社は回る

仕事柄、多くの経営者と会います。ということは、必然的にそれ以上のNo.2を見てきたことになります。一概にNo.2といっても、いろいろなケースがあります。二代目社長もNo.2ですし、副社長もNo.2です。見方を変えれば、部長や課長もNo.2です。課長は、その課の中ではボスですが、部長から見ればNo.2なのです。このようにNo.2とは相対的な存在です。ひとくくりにするならば上を目指してがんばる人ということになるでしょう。

これまでたくさんのNo.2を見てきて感じたことは、大きな勘違いをしているNo.2がなんと多いことか、ということです。この会社は俺がいるから回っている!と考える人が多いのです。こう考える人は、もちろん仕事はかなり出来ます。ボス以上に仕事が出来るNo.2も少なくないでしょう。しかしこのNo.2が忘れていることがあります。それがNo.2としての役割です。

ボスの仕事はマネジメント全般であり、No.2の仕事はその一部だということをすっかり忘れているのです。企業では、数人の社員のうち一人だけがずば抜けて仕事が出来るようなことが、当たり前に起こります。こうなると、その人は大きな勘違いをしてしまうのです。その勘違いがこの会社は俺がいるから回っている!につながります。そしてそれがやがて俺がやった方がもっとうまくいくという傲りに変わっていきます。こうして営業以外は何も出来ないことに気づかないまま独立開業し、マネジメントが出来ずに数年で倒産するという事になります。このケースはけっして珍しいことではありません。

これは、このNo.2をうまく育てられなかったボスの責任なのでしょうか?たしかにボスの責任は大きいでしょうが、その中にあっても優秀なNo.2は存在します。わたしは彼らを見続けてきて、なぜ優秀なNo.2に育っていくのかがずっと不思議だったのですが、動物行動学的に考えるといとも簡単に答えが出ます。私は馬と出会ってそれに気づくことが出来ました。

馬の世界にもボスとNo.2がいるという話は「No.2の役割」で書きました。ボスとNo.2の違いはほとんど無いということでした。それでは、馬の世界ではボスはNo.2を育てようとするのでしょうか?答えはNOです。馬のボスはNo.2を育てようとはしません。なぜならば、No.2を育てれば自分の地位が危なくなるからです。ですから馬の世界ではNo.2は自分で育ちます。自分の力だけでNo.2に育つのです。もちろん周りの馬たちや年上の馬の行動を見ながらではあります。でも誰も積極的に教えてはくれません。全部自分で学び取るのです。

「ボスはNo.2を育てようとはしません。なぜならば、No.2を育てれば自分の地位が危なくなるからです」
なんだか人間の世界でもよくある光景です。これまで見てきた多くの優秀なNo.2人は自分で育っていたのです。人間は特別だと考える方が不自然です。このことに気づくのに、なんと遠回りしたことでしょう。