「移転」はやってはいけない!

これまで多くの企業について経営改善のお手伝いをした中で、比較的多いものに移転に関するものがあります。

ここ1年間ある企業のお手伝いをしたのですが、元々は大繁盛店で、当時は行列までできる大人気店でした。
行列までできるお店になったということで、やはり手狭感がでてきたのでしょう。オーナーはより大きなお店に移転を考えました。
顧問税理士に相談したところ、それは良いとのことで、元のお店より数倍大きなお店に移転しました。

移転直後から問題が頻発し、大繁盛店から一気に転落してしまい、年間1千万円以上の赤字を出すようになってしまいました。


この段階で弊社にご依頼いただいたのですが、もちろんオペレーティング上の問題やメニュー構成などを含め、問題が山積みでした。
しかしこの段階で、最も重要かつ絶対にやってはいけないことをやってしまっていたことが、最大の問題だったのです

それが移転です。

つまり元々の大繁盛店をクローズして、新たな店舗に移転していたのです。

元のお店は道を挟んで反対側にあったのですが距離的にさほど離れているわけではありませんでした。そこで恐らくオーナーは同じやり方で経営できると思い込んだのでしょうが、現実はそれほど甘くはありません。人の流れ、客層、店の広さ、従業員など、なにか一つ違ってもまったくやり方は変わるのです。

このお店の場合は、それらが全てごっそり変わっていたにも関わらず、リサーチや計画など何もなしでいきなり移転したことが大きな間違いでした。
突然大赤字店になったということは、その赤字補填資金をどこかから調達しなければならないということです。しかし一時的に補填できたとしても、その後も継続的に赤字が続くと、いずれはクローズしなければならなくなります。


ここで移転という特大のミスが響いてくるのです。


経営においては、利益が稼得できている部分を切り捨てることは最もやってはいけないタブーです。その部分の利益があるからこそ、新たなチャレンジができますし、最悪それが失敗したとしても切り捨てて元に戻ることができるからです。

帰る場所を失った経営者はクローズ=倒産するしかなくなるのです。

やるならば移転ではなく増設です。
好調な1号店を潰して移転するのではなく、1号店はそのままにして2号店をオープンさせることを考えましょう。


この企業は、幸い1年間の努力が実って、なんとかプラスマイナスゼロにまで経営を立て直すことができましたが、まだまだ安心できるところにまでは至っていません。

1号店を閉めて移転してしまったことがこれ程まで響くとは、オーナーも考えていなかったことでしょう。