行動科学とは

行動科学(人間行動学)とは、動物行動学から派生して、人間の行動を科学的に研究し、その法則性を解明しようとする学問です。

行動科学の説明をする前に、イルカのトレーニングについて考えてみましょう。
水族館のイルカはなぜあんなに高い位置にあるハードルをジャンプして超えられるのでしょう。自然界にいるイルカは、みんな同じように高い位置にあるハードルをジャンプして超えられるのでしょうか。
実はこの回答はYESなのです。
水族館のイルカが特殊な筋トレをすることで、あのジャンプ力を身につけているわけではありません。それどころか、おそらく自然界のイルカの方がジャンプ力は勝っているでしょう。
それではイルカのトレーナーは何をトレーニングしているのでしょうか。
自然界のイルカと水族館のイルカの違いはどこにあるのでしょうか。
これは「命令されたときにジャンプをする」ことをトレーニングしているのです。
イルカであればみんなジャンプしてハードルを越えることは出来るのですが、命じられたときにそれが出来るとは限らないのです。
イルカのトレーナーは、どうやってイルカに教えるのでしょう。
いきなり高い位置にハードルを架けて、はじめからそれを跳ばそうとするでしょうか。
そして出来なければ怒鳴りつけたり、殴ったりして教えるのでしょうか。
そんなはずはありません。殴るためにはイルカに近づかなければなりませんが、イルカの方が遙かに力は強いはず。まともにケンカしたならばトレーナーは大けがを負うことでしょう。
イルカのトレーナーは、はじめは水面に棒を浮かべてそれを乗り越えるところから始めるそうです。
はじめは指示を出したとき、棒の方を向いたらその瞬間にすかさず褒める。
これでイルカは「棒の方を向いたら褒めてもらえる」ことを学習します。
これが出来るようになったら、次は棒を避けずに上を乗り越えられたらその瞬間にすかさず褒める。指示を出したら確実に棒を乗り越えられるようになったら、すこしだけ棒を水面から離します。これをうまく越えられたら、その瞬間にすかさず褒める。
これを繰り返すことで、あのハイジャンプをトレーニングするそうです。

行動科学はここから生まれました。
ただ間違って欲しくないのは、これは人を動物のように調教するための方法ではないということです。正しい結果は正しい行動の先にあると考えて、ある人の行動を正しいものに導く方法です。

そこには罵声や暴力など全く必要とせず、お互いが理解し合って全体を最適化する理想の形が存在するはずです。職場を明るく活気のある場に改善する方法。それが行動科学なのです。