本当に黒字は必要なのか?

「黒字とはなんでしょう」と聞かれれば、なんと答えるでしょうか。
最も多い答えは「最終利益がプラスとなっていること」というものでしょう。
会計に明るい方であれば「経常利益がプラスになっていること」と答えるかもしれません。

いずれも正解です。
それでは「なぜ黒字が良いのですか」と聞かれれば、なんと答えるでしょう。
「黒字でなければ企業は大きくなれないから」でしょうか。
あるいは「黒字でなければ倒産してしまうから」でしょうか。
もしかしたら「黒字でなければ銀行が融資してくれないから」と答える方もいるかもしれません。
これらの答えは正しいのでしょうか。

一般的にはこれらは正しいとされているようですが、わたしは間違っていると考えています。
正確に表現すると、財務会計の世界では正しいのですが、会計実学の世界では間違っているということになります。

勘違いされると困りますので先に書きますが、黒字が悪いというわけではありませんし、黒字にする必要ないわけでもありません。
赤字よりも黒字の方が良いのは当然ですが、ここで重要なのは黒字は結果であるということです。
最近、金融機関において融資審査をしているときに良く見かけるのが「無理に黒字化している決算書」です。粉飾ではないにせよ無理に利益を出しているのが見えるのです。

会計実学的に正しい決算書とは、赤字黒字に関わらずお金が残っているものを指します。企業経営においてもっとも重要視すべきものは資金繰りです。どんなに赤字であっても、資金が回っていさえすれば倒産しません。しかしどんなに大きな黒字であっても、資金がショートすれば倒産してしまうのです。

私どもは、決して無理な黒字化を勧めることはしません。
銀行対策と称して無理に黒字化することは本末転倒ですし、あまりにも金融機関をバカにしすぎです。
今日もある金融機関の支店長と話をしていたのですが、最近目にする決算書にはある特徴が見られるとのことでした。
それはここ数年の売上高が乱高下しているにもかかわらず経常利益がほぼ一定なのだそうです。
これは明らかに粉飾なのでしょうが、いくら黒字であってもこのような決算書は信用できないと仰っていました。
企業経営には波があるので、ある期が赤字であっても当然だとも仰っていました。

わたしもそう考えます。
無理な黒字は、不必要な納税をも連れてきます。
赤字であれ黒字であれ、しっかりと経営状況を把握した上で正しいプロセスを選択することが、正しい黒字への最短距離です。
正しいプロセスの先には、必ず正しい結果が待っているもの。
そしてそのためには、経営に必要な会計学=会計実学をしっかりと身につけてください。

会計は武器です。会計を身につけずに経営することは、兵士が丸腰で戦場に赴くようなものなのです。戦うための武器は一つでも多い方がいいに決まっています。
「一年の計は元旦にあり」ともいいます。
今年はぜひ会計実学を身につけてみてはいかがでしょうか。